続・神話 音律篇 その一

5月24日の記事に続く神話と誤伝  今回は音律篇です。

定義の機会を失った音律用語

 近頃、みんなでつくる「ウイキペディア」の記事を見たり引用したりすることが多くなりました。
 ところが「12等分律」の解説がどうなっているかを見て驚きました。内容・解説はともかく見出しの用語そのものが「平均律」となっているのです。そして解説では次のように、12等分した音律で・・・。

「十二平均律とは、1オクターブを12等分した音律である。隣り合う音の周波数比は・・」

 「平均」と「等分」は同義でしょうか?イコールではありません。ある値をムラなく等分するなら平均の必要はなく、両語の併用は明らかにおかしい。なぜ「12等分律」としないのでしょう。NHKの番組「言葉おじさん・日本語が大変です」に取り上げて欲しい音楽用語のひとつです。

 かく申す筆者も、昔、等分律=平均律が常識であった時代に書いた調律法手ほどき文の中で、「12等分平均律」という用語を使いました。反省・後悔。今なら使いたくない用語です。
 用語「平均律」は、あまりに一般化したバッハの≪平均律曲集≫の曲集名にはともかく、音律論議の中で不用意に使わないようにしたいものです。
 頼りの原(獨)語にも問題があります。「等分律」の意味でよく使われるgleichschwebende Temperatur の字義は「schwebung唸り=ビートが等しい律」。しかし、「十二等分律」中にはビートが等しくなる音度・音程はありません。そのため矛盾含みとなるのです。ほかに「等量の律 gleichmaessige Temperatur」という用語もありますので、それを一般化すべきでしょう。英語には「EDO=オクターヴ等分轄律equal division of the octave」があり12 EDO、55 EDOのように使います。
(つづく)

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