楽器学演習 2 の解答

解答

ルッカース鍵盤の特徴 
 現代ピアノとくらべて、派生音キイ同士が寄り添い接近していることがわかりますか?それは、真正ルッカース鍵盤の特徴の一つです。つまり、ミ・ファとシ・ドの間が広い。多くのルッカース楽器は後世、「ラヴァルマン」という音域拡張工作を施され、オリジナル状態のものは希少です。
 ルッカース鍵盤のように、指の太い奏者は間に入らないほど「各派生音キィが接近」するキイ・レバーの分割法からくる鍵盤の表情は、同じオリジナル楽器でもイタリアンの鍵盤のそれと違うのです。
 手を奥へ入れて派生音キィの間に指を入れると発音のタイミングが狂うなどしますので避ける、というのがチェンバロ奏法のポイントの一つですから不都合のない鍵盤でしたが、やはり制約をうけます。そのため、十八世紀の各国メーカーに影響力をもったルッカース楽器も、鍵盤分割法は一部のドイツ楽器を除き他国へ伝播しなかったようです。
 チェンバロをお持ちの方はマイ楽器の鍵盤の作り方を、オリジナル楽器にふれる機会があればその鍵盤の作り方を観察すると見どころがひとつ増えるでしょう。

解説

 楽器学演習をルッカース楽器から始めたので「ルッカース鍵盤」と称してきましたが、上記特徴は同時代のアントワープ製楽器の鍵盤様式でしたから、「フレミッシュ鍵盤」といったほうが良いかもしれません。

 以下関連説明を、ベルリンのプロイセン文化財団 国立音楽研究所楽器博物館収蔵楽器について書いた文(拙著『著名博物館・コレクション別 チェンバロ クラヴィコード オリジナル楽器便覧』下巻46頁)から加筆・転載します。ベルリンにオリジナル・ルッカースが4台もあること自体珍しい。ハプスブルクの支配下にあったアントワープの名器が、ウィーンの美術史美術館には1台もないのに!!

あてんしょん・ぷりーず
 ウイキペディアの美術史美術館の説明は楽器のことが出ていません。その上ウイキペディアの写真にある美術史美術館に楽器はありません。楽器展示館はホーフブルク(新王宮)です。

幅広のD
 ベルリンのプロイセン文化財団 国立音楽研究所楽器博物館収蔵のRuckers楽器4台についてFriedrich Ernstが発表した論文‘Four Ruckers harpsichords in Berlin’, GSJ. XX (1967)で、Ruckersのオリジナル鍵盤は、奏者の指が間に入らないほど各派生音キィが接近し、それが真正鍵盤判定の拠り所になっていること、他方、同時代のイタリアの鍵盤は、全DキィのC♯、D♯両キィに挟まれた部分が広い「幅広のD」の特徴があることを指摘した。
 Ruckers楽器を伝承した十八世紀のTaskinほか獨、英の工匠達も奏法に制約を受けるRuckers式の鍵盤分割スペーシングは踏襲せず、幅広のDを採用した。例えばウィーンや南独のフォルテピアノも大部分が「幅広のD」で作られ1810年以前のWalterピアノの場合でも、広くなったD音関連分が吸収された均等割りとはせず、幅広のDが奥部のアクションやナット・ピン等弦スペーシングにも及んでいる。
 現代製復元楽器では、そのような派生音キィの特徴的スペーシングまでコピーしない場合とする場合がある。


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