現存ルッカース楽器のO’Brienカタログ

現存ルッカース楽器の記号化
 名器ルッカース楽器は、前回ブログでふれたGrant O’Brienの研究によって明らかにされました。 
 現在O’Brienは、エディンバラのラッセル・コレクションを辞して研究と製作を続けています。しばらく、イタリアンの中でも特徴的なナポリ楽器について研究していましたが、最近モーツァルト少年がイタリア旅行で弾いたであろうチェンバロの再現製作をしています。
 1990年当時、同コレクションで学芸員をしていた頃書かれたドクター論文に、残存ルッカース楽器のカタログを含めました。
 そのカタログは、製作された西暦年と記号化した製作者名でまとめられ、たとえばブリュッセル楽器博物館蔵のIoannes Ruckersによる1638年作は、同年作が複数現存しているので、1638のあとa,b,c・・・で区別し、
1638aIR
とする簡潔な表記でした。
 楽器に製作年の記入がなくても、O’Brienの手法で編年解釈された製作年は(カッコ)で示されます。
 そして、ルッカース・ファミリーの初代Hans、それに長男Ioannes、二男Andreasと甥のIoannes Couchetの楽器はそれぞれHans作がHR、Ioannes作はIR、Andreas作はAR、Ioannes Couchet作はICとする記号でした。
 ちなみに、
1638bIR
は、改造痕が少なく貴重なオリジナルの鍵盤メカが残る国宝級のトランスポージング・ダブルという「上下鍵盤音名が4度ずれた楽器」で、いまラッセル・コレクションにあります。

 1638aIRは拙著『著名博物館・コレクション別 チェンバロ クラヴィコード オリジナル楽器便覧』下巻102頁、1638bIRは上巻47頁、上・下鍵盤音名が4度ずれた楽器について興味のある方は下巻180頁「Ruckers楽器のサイズとピッチ」を、真贋鑑別と編年判定の拠りどころ=R番号に関するO’Brienの手法については、上・下巻の「はじめに」をご覧下さい。
 ナポリ楽器の特徴については上巻104頁、そのピッチについては下巻179頁をご覧下さい。

 次回はフレースハイス博物館の
(1626)AR
を観察します。


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