ピアノの鉄骨とピアノの音色

 ピアノの鉄骨について
 2月4日スタートの本ブログ第1号記事のピアノの鉄骨関連は、
 鉄骨フレームは、年表などで「1820年、トムとアレンが発明」とされている。我々は、ついそれが現代ピアノの鉄骨のようなものと思いがちだが・・・。 
という文章で始まりました。 アムステルダムで活躍中の岩村かおるさんが、フィンチコックス・コレクションでクレメンティ・アワードを受賞されたとき、ブロードウッド社の技術者からいただいた『ブロードウッド社 社内記録』中の、次の記録を御紹介したものです。

 「William Allenの雇主Messrs. Stodat(シュトダート)による1820年特許」、「メタリック弦プレートを使うテンション・バー[補強部材]のシステマチックな初めての組み合わせ」によって、「当社は1845年と1851年に影響を受け不具合を改善。この新メカの作用の完成が、技術記録にある『アイアン・グランド』のことであろう」(訳 野村満男)
 つまり、「ThomとAllenの特許」とは、現代ピアノに使われているような「鉄骨」ではなく、当時のピアノの高音域に見受けるヒッチピンを兼ねたメタル・プレートのこと・・・・・・

 昨日、昭和音楽大学の「ピリオド音楽研究所」主催の公開講座「ピアノの変遷パート1」に行き、使用された収蔵楽器ロマンティック・ピアノを観察、上記の特許直前の1819年製プレイエルの高音部に着装されているヒッチピンを兼ねたメタル・プレートの部分写真を、許可を得て撮らせていただきました。(下)


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1819年製 プレイエル(昭和音楽大学ピリオド音楽研究所所蔵)

 ThomとAllenの特許取得年とこのプレイエル・ピアノ製作年の接近した関係の背景は不明ですが、ブロードウッド社 社内記録文の説明がよくわかる構造だと思います。
 メタル部分をげんこつで叩くとゴーンゴンと響くほどの振動系への「音響参加」が認められます(タッピングというテスト法で楽器製作工程ではよく使う)。それは1850年ころのエラール・ピアノにみられる規模の大きくなった鉄骨についても同様、「音響参加」が認められます。(下)

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1851年製エラール (名越家所蔵)  手前の弦の下に帯状に見える白いものは、アンダー・ダンパーといわれる弦振動を下から抑えるダンパー群で、最高音域にはついていませんし、アフター・リングが長くなる効果を生じます。

 ところが、同じように現代グランドの鉄骨を叩いても手が痛いだけで、ほとんど響きません。
 よって、時々みかける現代メーカーによる「鉄骨フレームがピアノの音色に関係する」という説は、上記プレイエル・ピアノ、エラール・ピアノについては納得できますが、現代グランドについてはいかほどの関与があるのか大いに疑問です。

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