チェンバロのモットー研究  1

ラテン語のモットー

 前回のブログで、鍵盤音楽のレクチャーコンサート「楽器の饗宴で綴るピアノへの道」の使用楽器のうち、母子ヴァージナルの母楽器蓋内面に書かれたラテン語「SCIENTIA NON HABET INIMICVM NISI IGNORANTEM [sic] 知は無知以外敵をつくらず」を紹介しました。出典は、ブリュージュ:フルートウース美術館蔵のルッカース初代ハンスによる1591 HR 6-voet ポリゴナル・スピネット・ヴァージナルに書かれているモットーです(拙著『著名博物館・コレクション別 チェンバロ クラヴィコード オリジナル楽器便覧』下巻 114頁参照)。

 チェンバロの蓋内面に書かれたラテン語モットーは、時にはコンサート中ずっと目に入る文なので、意味を知っていたほうがいいですね。

 ラテン語の内容は、聖書(旧約・詩篇 150が多い) からの引用、文学作品からの言い換え、世俗的金言、俚言等で、聖書からのモットーや古典的詩文形の使用つまり、古代神話への言及、古代以来の天体論、天地の調和の表現も含め古典著述の引用は、さまざまなルネサンスの金言、美文、警句に包含されるものを通して広く知られ、単なる楽器への使用というより格言、箴言、著名な碑文に対する考古趣味ばかりではなくその時代の幅広い知的な相場を示し、伝統的に表現実行されてきたコミュニティーの姿勢や、人々の価値観の記録でもありました。

 いま、Vermeer(フェルメール)が大人気のようで私・野村としては大変喜ばしい。と申しますのは、当時のオランダ・フランドル絵画の中でも、フェルメールの描く楽器像は緻密なオルガノロジ−上の情報を多くもたらしてくれるからです。ぜひ予備知識を持って観察していただきたいと思います。残念ながら、ルーベンスの絵からはオルガノロジ−のいい情報は得られません。
 そしてモットー・金言の知識が、「モーツアルト研究」にも役立つのです。

 フェルメール作品のうち、英国王室所蔵の<音楽のレッスン>では、ミュゼラ−・ヴァ−ジナルを弾奏中の女性を背後から描いています。楽器の蓋内面には一部隠れており、下掲ウイキペディアからの画像は光線の具合でしょうか鮮明ではありませんが・・・アラベスクと火炎模様に囲まれたMVSICA LAETITIAE COMES MEDICINA DOLORVM(音楽は喜びの案内人 悲しみの薬)が書かれています(改訂増補版『Mozartファミリーのクラヴィーア考』 132頁参照)。
 因みにフェルメール作品に描かれた長方形ヴァ−ジナルは、すべて鍵盤部が右寄りのミュゼラ−・ヴァ−ジナルです。鍵盤部が左寄りのモデルはスピネット・ヴァ−ジナルといいます。

<音楽のレッスン>1662年頃 
聖ジェームス宮殿ロイヤル・コレクション蔵
 
       音楽のレッスンウイキペディアから


(つづく)

Comment

ラテン語モットー

こんにちは。
某MLでちょうどラテン語モットーの話題が出ていて、そこで知ったサイトです。(ご存知かもしれませんが)
http://www.bigduck.com/
出典が書かれてないのが残念ですが、ジョークも含めて各種に分類されています。

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