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連載2  昔のピッチについて 

ルネサンス期には基準ピッチがあった?
  十六世紀のピッチ標準 ⦆⦆⦆⦆⦆  多様なピッチの管楽器やオルガンが残存するため、従来、ヨーロッパ各地に「地域別」標準ピッチ・レベルがあったとする解釈が一般的でした。それはピッチ標準が変化し始めた十七・八世紀音楽については概ね正しいが、ルネサンス期の楽器については「地域別」ではなく、コンソート楽器間にみられた複数ピッチからなるヨーロッパ共通の「組み合わせピッチ・システム」があったためとする説を紹介します。

       Muller.jpg
  チェンバロとしては最初期の1537年製/国立・ローマ楽器博物館 蔵 チェンバロ誕生の頃を語るとき話題になる1537年のハンス・ミューラー楽器(オリジナル楽器便覧 上巻p.100/下巻p.41参照) 下記のバイエルン公結婚式の31年前に作られた。

 ある地域で標準ピッチ・レベルが統一されていても、多様なピッチ楽器からなる混成アンサンブルでは、特に異種楽器間に移調が要求されたとき、ピッチ・システム標準化の必要性も生じたはずです。歴史を遡ってみましょう。
 イタリアと、世紀前半にアルプス以北で作られたチェンバロやスピネットがごく小数ですが12台残存しています。そのうちの1台が、チェンバロ史上最初期の一段鍵盤楽器ハンス・ミューラー(ライプツィッヒで1537年製作/国立・ローマ楽器博物館 Museo Nazionale degli Strumenti Musicali di Roma 蔵)があります(上)。この楽器は、鍵盤両端に移動できる空間があって、a1= 440Hzの下3半音、および下5半音の間のピッチになる構造です。
 ルネサンスの木管楽曲は、全音違う2種類のピッチ(およそa1= 455と410Hz)のミーントン律による容易に移調できる2種類のピッチで、上記ミューラー楽器の2種類のピッチより四度高く、そのピッチと十七世紀前半のルッカース二段鍵盤楽器のピッチは、現代のルネサンスのピッチ理解とほとんど一致しています。多くの十六世紀チェンバロは、少なくとも a1= 440Hzより4半音も低い現代の F 音に相当するピッチで、十七世紀半ばまで用いられました。
 現代ピッチより4半音低い、2半音低い、1半音高い、3半音高いという4セットが各地に共通の汎ヨーロッパのピッチ・システムであったという結論を得た英国の研究家ニコラス・ミッチェルは、十六世紀の様々な混合編成アンサンブルの例証からみて、ピッチ問題の証拠品にもなる木管・金管が、弦楽器・鍵盤楽器と合奏したのは明らかで、それには異種楽器間にピッチ標準設定の必要があり、ヨーロッパには共通ピッチ・システムがあったというのです(ギャルピン・ソサイエティ・ジャーナルGSJ, 2001,p.97.)。
 
傍証 結婚式のアンサンブル

        Beyern Duke  バイエルン公父子

 その傍証として1568年、バイエルン公の婚礼に欧州中から100人を超える演奏家が参集したこと(下巻p.146) を挙げています。使われたであろうリュートの調弦は、半音上げるだけでも弦更新が必要で全音の上げ下げはありそうもないし、やや柔軟なヴィオールでも調節可能な幅は小さく、楽弦のセット法はピッチ類推の重要なヒントになります。
本ブログ http://tokyocollegium.blog110.fc2.com/blog-entry-471.html 参照

つづく

連載1  昔のピッチについて 

昔のピッチ研究 古楽器愛好家のために 
 
 古楽界の活動と昔のピッチは重要な繋がりがありながら、その問題を愛好家は敬遠しがちです。そこで、近年の知見を紹介しながら連載で詳しく解説してみましょう。

 ピッチとは
 ピッチの基準 ⦆⦆⦆⦆⦆  「標準(スタンダード)ピッチ」とは、ある特定の周波数に特定の音名を結び付けたもので、そのピッチからズレたほうが都合の良い楽器もあります。その場合、楽器によっては移調楽器あるいはコンソート楽器といいます。
 現在の標準的なピッチとされている a1= 440~442Hz を記憶して読譜学習したため、a1= 410~415Hz あたりに調律されるバロック楽器にすぐ対応できない聴覚をもつ現代人が増えています。ところが音楽文化の各領域同様、「ピッチ標準」は利便性や流行に左右されて変わりやすいので、多様なピッチに対応したバッハ 時代の音楽家は、少なくとも「絶対音高」の記憶はしていなかったでしょう。

           無題   ウィキペディアから

基準器具
 音叉 ⦆⦆⦆⦆⦆  いま現場では「ピッチ・レベル(周波数)」の決定に、音叉や電子機器を使います。基準器具のない時代のピッチ問題は、証拠となるものがしばしば掴みどころがなく不明な点が多いのですが、人類の作り出した傑作器具のひとつといわれる音叉の誕生は比較的遅く、バッハ 時代の英王室トランペット奏者・ショアJohn Shore による発明(1711年)とされ、ピッチの基準器具として使われました。オルガン管(笛)の歴史は古いけれど、風圧と温度の変化でピッチが容易に変動するので精密な基準器具とはいえません。
 そのショア作と伝えられる1715年頃の音叉は、a1= 419.9Hz。同時代の有名なヘンデルの音叉は、少々高い a1= 422.5Hz です。その後ピッチ基準は上昇を続け、現代までにa1 は20Hz以上上昇したことになります。楽器はともかく、上昇傾向は声楽家にとって大変ですので、標準ピッチを法律で決める国もあります。

つづく


相模原シティオペラ 《仮面舞踏会》

相模原シティオペラ 

ヴェルディの 《仮面舞踏会》
           仮面舞踏会

 ドイツ在住のヴァイオリン奏者石黒章君が、相模原シティオペラのオーケストラでコンサート・マスターを引き受けるので帰国。昨日、一年ぶりに新宿で再会しました。

 「どう? この酷暑。ヴェストファーレン州あたりは涼しいのでは?」
 「いやぁ、北部ヨーロッパ全体が暑くって、33度くらいになります。」

 これは怪談より怖い話だと私は思います。帰宅して見た夜のTVニュースでは、アメリカからカナダにかけても山火事が多発しているとか・・・・。

 以前、本ブログ・http://tokyocollegium.blog110.fc2.com/blog-entry-597.htmlでも紹介した相模原シティオペラ 今年の演目はヴェルディの 《仮面舞踏会》
 スタッフは以下の通り。歌手は堂々のダブルキャストです。
          仮面舞踏会キャスト クリックで拡大

 今年も楽しみにしています。

ニッポン、歴史チェンバロ事始め回顧録 連載16-3

  続・ソフト関連 愛好家のためのレパートリーの増やし方

 前回、テレマンやクープランの鍵盤二声曲を合奏曲にする方法にふれた。いま、トラヴェルソやチェンバロといった古楽器を使い、ラヴェルありショスタコあり・・何でもありの驚きの5人グループ「音楽三昧」の《ゴルトベルク》はそのような編曲技法である。いうまでもなく「音楽三昧」グループの楽器編成のためのオリジナル曲は無い。コンサートのたびに演奏曲は編曲されている。
 終戦直後、NHKの名曲番組のテーマ曲は《平均律曲集(WTC)第一巻終曲前奏曲》の弦合奏編曲だった。演奏用の楽器指定のないWTCのレンダリングも、古楽資源が無数であることを示唆している。
 合奏は楽しいだけでなく、人と人を繋ぐ効用があるので勧めたい。ついでに原典尊重家のために例をいえば、ザクセン州図書館蔵のテレマン作品は、「手稿譜(写譜家の?)」をパブリック・ドメインとしてウエブ上で見ることができる(IMSLP/Petrucci Music Library)。手稿譜や初版譜での演奏は味わい深いものがある。以前、当該譜収蔵館詣での容易ではなかったことを顧みれば驚異の時代とはなった。

  1930年創業のヘルマン・メック社は、楽譜出版もしたテレマンの定期刊行譜に倣い“zfs=zeitschrift fur spielmusik”を戦前から出しており、筆者蔵の最古版は1933年の14号。リコーダー4部(SATB)のためのバッハのコラール集である。
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 第二次世界大戦の少し前の1933年に出た14号。やがて独裁者ヒトラーが禁止することになるドイツ独特のフォント亀の子文字によるタイトルは、《四声部のコラール集》だが、添え書きには「合唱やあらゆるallerlei楽器の合奏で」、と書かれている。

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  Christoph Demantius (1567-1643) による《ガイヤルド集》等の古い楽曲もある。同じドイツ敗戦以前の1940年の86号。ドイツでは第一次世界大戦後からバロック復興が盛んになっていた。  

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  敗戦後も選曲・編集の方針は変わらなかった。1950年の149号はアルプス地方の舞曲集。

 本邦でも上記編曲技法によるリコーダー愛好者のための『多田シリーズ』、北御門版『リコーダー四重奏曲集』などの刊行は全音楽譜出版が積極的に刊行した。『ハウスムジークの試み(本連載10~14)』に書いたYFEでは、上記“zfs”を毎回、初見練習曲として使った。
 

ニッポン、歴史チェンバロ事始め回顧録 連載16-2

ソフト関連
表現スタイルと楽曲
 演奏家の演奏表現が時代のファッションに左右されるにしても、貴公子といわれたレオンハルトの初来日(1977年)のとき、某高名評論家は貴公子の演奏についていけなかったようで「…テンポがふらつき…」等のマイナス評価をした。
 ショパン曲でさえ150年以上を経た音楽。バッハやモーツァルトの古い音楽遺産を生業資源にしている管弦のプロ奏者には、ピリオド楽器とその奏法を理解しようとしない人もまだ多い(本連載7「ピッチとミーントン 反対勢力」参照)。
 初来日のレオンハルトは鍋島女史との対談で、そろそろ後期バロックに食傷気味となった当時の欧州事情と、アマへの対応に触れている。いま、我が国のプロは「音楽を必要とするアマチュア」に「音楽の力と効用」を説くべきで、そのために時間をかけることも意義があると思う。

バリトン・トリオは宝庫
 十六〜八世紀、当時の王侯貴族がお抱え音楽家に課し、その音楽家の務めから遺された楽曲は、古楽の贈りものに他ならない。例えば約125曲というハイドン全集から大量に見つかるバリトン・トリオがある。バリトン声部をヴァイオリン等旋律楽器に置き換えれば、素敵なアマチュア向きの合奏曲となる。トリオでは響きが不足?とんでもない。書く立場では四声よりむつかしい三声書法の見事な作品群である。
 現代の出版社はときどき、バリトン・トリオから抜粋して《ディヴェルティメント》などと新たにタイトルを付け、独り歩きさせる楽譜を出す。バリトン・トリオは、出版社にとってもお宝のひとつなのだ。

無題 
 このアマデウス版は、TrioXIV113からAdagioとAllegro di molto,TrioXIV95からMenuet,TrioXIV81からFinaleというように抜粋、構成されている。

テレマン クープランにも
 また、テレマンにも《50のメヌエット》や《3ダースのファンタジー》があるし、クープランがすでに自作曲(《コンセール》)でいうように、二声鍵盤曲はバス声部をもとにリアライズして内声を充填、ソロ楽器による上声旋律声部を伴奏するなら音楽遺産活用に事欠かない。
第6コンセール
クープラン 第6コンセール冒頭

 このクープランの曲は作曲家自身の説明も面白い。曰く、いろいろな演奏は、
1,クラヴサンのソロで。
2,上声譜は適する旋律楽器で、下声譜は記入されている数字に従いアンサンブル譜として2人で。
3,上記2,の編成にガンバ等で下声を補強し3人で。
等、原譜の状態からいろいろな用法が考えられる。


レオンハルトのことば

1980年のエラスムス賞受賞記念講演から  
                
          レオンハルト柴田 受賞前の1973年、レオンハルト邸で柴田君と共に

 先日、フト目に止まったレオンハルトのことばがあります。演奏を心がけるなら、そうありたいアドバイスなので、紹介します。
            http://tokyocollegium.web.fc2.com/IMG_20180623_0001.pdf

5月26日 アンサンブル・シェーンフェルト演奏会レポート

5月26日 アンサンブル・シェーンフェルトの第16回演奏会  

 会場はお気に入りの川崎市 多摩市民館ホール 
          
                 アンサンブルシェーンフェルトちらし
                  

               無題  

 当日多摩川の辺りは、照らず降らずのお天気でした。そのためか運動会開催の学校が多かったようです。

 ご覧のようなサロン(小)・オーケストラですが、フォルテッシモで調和したときは、驚くほどの響きが出ます。また、強音と弱音の落差を大きくとれるように練習しています。関連しますが、例えば経過音も倚音(アポジャトゥラ)も同じような強さにならないよう求めています。会場アンケートでは十分楽しめたという好評がほとんどでした。
 オーボエの虎谷先生がお見えになったことを知って、びっくりでした。有難うございました。

 前日の練習風景
         リハ



 

ニッポン、歴史チェンバロ事始め回顧録 連載16-1

ハード関連
 ショパンは、その日の体調の良し悪しによって使用ピアノを、シングル・アクションとダブル・アクションとで使い分けたという。
                220px-Chopin,_by_Wodzinska[1]  ウィキペディアから

 今年(2010)はショパン年。先日、ピアニストの仲道郁代さんがショパン時代のプレイエルを弾くNHKのドキュメンタリー「ピアノの詩人ショパンのミステリー」を見た。長年疑問のペダリング指示記入位置について、楽器の性格(主にダンパーの制音性能)がいかに密接に関係しているか納得できたと語る部分が印象的だった。これも「古楽器」からの贈りものにほかならない。

 ベートーヴェンの《月光》の第一楽章すべてと、《ヴァルトシュタイン》終楽章冒頭にある作曲家自身による「ダンパー解放指示」も、ピリオド楽器で試みるなら即理解できること(拙著『Mozartファミリーのクラヴィーァ考』p.85〜、および私・野村が初期ピアノのダンパー機能について書いたブログ・http://tokyocollegium.blog110.fc2.com/blog-entry-28.html参照)である。古楽愛好家の『アントレ』読者である諸氏は、先刻ご承知のことだろう。ともあれ、数年前から私が唱えていたことを遅まきながら現役のピアニストと、誘導責任のあるNHKが気付いてくれて嬉しい。
  故・鍋島女史曰く「それではチェンバリストとは言えません!」。ピアノで修業した「ワザ」そのままで弾く、しかもJ.S.バッハしか弾かない(弾けない?)チェンバロ奏者は多いし、史上有名なクラヴィコードはどれほど理解されているのだろう。C.Ph.E.バッハは、両楽器を経験すべきであるといっている。
 仲道さんはスタインウェイが代表格の現代ピアノへの対応を放棄できないお立場だが、古楽の世界に特化する場合、フォルテピアノ、オルガンもある。歴史チェンバロ製作研究を経験して40年。久保田工房刊のDVDブック『チェンバロ』にみるように、ようやくハードとしての楽器製作技術は充実した。しかし、多様な鍵盤古楽器の表現法に取り組むには、まだまだ多くの人が「楽器を弾く機会の獲得努力」からしなければならないだろう。

ニッポン、歴史チェンバロ事始め回顧録 連載15-6

マリー・アントワネットの所有したタスカン
 史上有名なマリー・アントワネットは作曲し、弾き語りもしたという。彼女の所有伝承のある楽器(エール大学蔵 1778, タスカンTaskin, Pascal:拙著『便覧上巻』p.25参照)に使われた音律や如何?(フランス音律吟味は、2009.05.23以降の 楽器技術情報関連小ブログに連載済)などの思索をするとき、従来の分類学的研究はほとんど無力で、史実や音響、構造から迫る実践楽器学が威力をみせる。
 
   アントワネットのTASKIN 少女時代の肖像
  
           エール大学蔵 1778, Taskin, Pascal マリー・アントワネット(右)の所有伝承がある。

 その視点で、モーツァルトの使用鍵盤楽器にこだわった拙著『Mozartファミリーのクラヴィーア考』は、調査執筆の段階で永年の「チェンバロ研究」が大いに役立った。アクションの実物や図面を見ただけで構造の動作・機能、それに先人達の畏敬すべきご苦労が即わかり偲ばれるのだ。

優秀な国産木工機器
 昔、筆者のウデで長尺の響板材の接(は)ぎあわせは一日がかりだったが、木くずに閉口しながらも今なら数分。優秀な自動カンナや昇降盤も入手して種々の追認実験ができるようになった。例えばチップソーのおかげで、ン十分の1mmオーダーの加工ができる。そこで自戒の言葉。そういった国産木工機器がしっかりしているのはいいのだが、電動工具もなく部材を温めながら膠(ニカワ)接着で名器を作ったルッカースを超えられないようでは情けない。

モーツァルトの父親の楽器調整技術
 ここへきて、専門家教育のレベルアップにも資する古楽と古楽器への理解、それに楽器オーナーの調律調整技術の学習も大切だ。天才の父親レオポルトは、並みはずれた楽器調整技術をもっていた(上掲『・・・・クラヴィーア考』p.38参照)。 先日、古楽科学生と話す機会があって驚いた。演奏実技練習に追われてその日暮らし。ハード、ソフト両領域共に殆ど無知。情報が容易に入手できるIT時代の「本を読まない世代」特有の油断が窺えた。ウエブ上には、神話・噂話レベルの「クズ情報」も溢れているものだ。あの70年代の若人は、実技とともに音楽学的知識も貪欲に吸収したと思う。

オリジナルRuckers鍵盤か後補鍵盤か

鍵盤配列補遺

 フレミッシュ、中でもルッカースのオリジナル鍵盤の派生音キイの配列と、現代のピアノに見られるイタリアン起源の配列とが異なるという説明をしてきましたが、かえってややこしくなってしまったようです。写真で見くらべるのが一番。
 下掲の鍵盤は、エディンバラのラッセルコレクション蔵の1638B IR(別著『チェンバロ クラヴィコード オリジナル楽器便覧』― 上巻 47頁)、スタンドとIoannes ローズはイタリア由来と思われるものに取り替えられているが、ノーマル・ダブルの上下鍵盤等、他のアクション部分も殆ど手を加えられていないオリジナル状態にある現存唯一の貴重な世界遺産級楽器の下鍵盤です。黒鍵の質が汚く見えますが、オーク材が古代、沼地に倒れこんで黒く染まり、ボグオークという名の貴重な材になったものを使ったキイです。

いずれもクリックで拡大
Ruckers鍵 盤

これを見ておくと、次の鍵盤はルッカースのオリジナル鍵盤であることがわかります。

ルッカース真正鍵盤、

そして次は? Ruckers銘が書かれているが少なくとも鍵盤は後補ですね。

Ruckers後補鍵盤

楽器クイズ その3

楽器クイズ第3問の答え  3月31日出題

Karest図面
 
 楽器クイズ第3問は、アントワーブのチェンバロ時代を拓いたプレ・ルッカース期の重要楽器、「1548, Karest, Ioes 初期モデルの一つ:カレスト・ヴァージナル(上)の鍵盤についての出題でした。

第3問  下はカレスト楽器の鍵盤です。 上は楽器筐体に収めたもの。下は筐体から出した状態。

      Karest3.jpg
     Karest鍵盤  クリックで拡大


    
 この鍵盤のシャープ・キイの配列には、現代一般的な鍵盤と異なる特徴があります。どこが違うのでしょうか。


考え方 
 現代一般的な鍵盤との比較をすれば良いのだけれど、つぎのピアノのキイを観察して下さい。「むりやり等分割されている」幹音キイ(ピアノの白鍵相当)を眺めてもわかりません。白鍵の分割線と黒鍵の位置関係を観察します。

CIMG1662a.jpg Karest鍵盤

  
 現代ピアノのピアノ鍵盤と違い、派生音キイ(黒鍵)のキイ幅中央に、幹音キイの分割線があるというルッカース楽器の鍵盤デザインに固有の特徴です。この特徴は、ルッカース楽器のトレードマークとして真贋判別の基準にもなっています。 トランスポージング楽器で知られた1638 bIRの鍵盤を観察して下さい。
       1638 bIR鍵盤「トランスポージング楽器」1638 bIRの鍵盤と上鍵盤の最低音域
      1638 bIR上鍵盤バス クリックで拡大
 
 さて、よくよく見ると、カレスト鍵盤の幹音キイ分割線がファ♯キイとラ♯キイの先端中央ではなく、少しずれています。ということは、派生音キイ(黒鍵)同士が寄り、演奏上都合が悪いというフレミッシュ鍵盤の欠点を改善しようとしたのかも知れません。プレ・ルッカース期にはルッカースの鍵盤分割法オンリーではなかったようです。

  いま、ほとんどのチェンバロは現代ピアノのピアノ鍵盤の分割デザインになってしまいました。この現代ピアノの鍵盤分割デザインは、イタリア楽器由来のものです。つまりチェンバロでは、フレンチ・モデルの分割はイタリアンと同じですが、ルッカース・コピーと言いながら、鍵盤の分割デザインまでコピーしないのが当たり前になっています。

余談
 「むりやり等分割されている」幹音キイとはどういうことでしょうか…実は、ドレミの各鍵盤幅とファソラシの幅は本来少し違うことになるのですが、等分割にしてしまいます。そういった現代ピアノのピアノ鍵盤分割のブレは、数字で示すとオクターヴ幅の5/12と7/12の差、0.16ミリほどでごくわずかです。そして、ド♯とレ♯が入っている隙間の幅と、ファ♯ソ♯ラ♯が入っている隙間の幅がかなり違うことで吸収されている事がわかります。



曲タイトルの和訳余聞

ツィーラー作品の曲タイトル

 お知らせした今年のアンサンブル・シェーンフェルト演奏会のプログラム、最後の曲はカール・ミヒャエル・ツィーラー 作曲 ワルツ《ようこそいらっしゃませ》Op. 518

       アンサンブルシェーンフェルトちらし

なぜツィーラー?
  私達は 2002 年の創団以来、ツィーラー作品の演奏を続けています。
 ウィーンフィルをコンサートマスターで卒業したライナー・キュッヘル氏が、ウィーン・リング・アンサンブルを率いて初来日したのが1991年。まだカザルスホールがあり、そこで聞いた僅か9人でオーケストラの響きを奏でるアンサンブル技術にビックリ。プログラムがほとんどツィーラー作品で、わかりやすいツィーラーを楽しく演奏するのも良さそうだと思ったものでした。バッハ、ベートーヴェン、ブラームスでなきゃ・・・という堅物の友人には軽蔑されましたが、「古き良きウィーン情緒とはこれなのか」という認識をした次第です。

 《ようこそいらっしゃませ》の原題は“Hereinspaziert”    なぜかドブリンガー版サロン・オケの楽譜曲名は“Herrreinspaziert”と、r が3つも。(下)

          無題
日本の独和辞典にはないドイツ語
 この曲名、和訳に苦労しました。『相良の独和辞典』にはなく、『三省堂の独和辞典』には「ぶらり入ってくる」、『三修社の独和辞典』は Hereinkommen「入ってくる」を見よ、と「たらい回し」状態でどれも曲名になりません。ドイツ在住の知人へ問い合わせて決めたのが《ようこそいらっしゃいませ》。
 元旦のウィーンフィルのニューイヤーコンサートでは、この曲は1979 年と 2016 年に演奏されています。日本中継は 1991 年からなので、2016 年放映時の和訳が初めてだったのでしょう、「ようこそ」がなく《いらっしゃいませ》。[ようこそ]は無くても良いでしょうが、演奏時のテロップでは《ヘラインシュパツィールト》と、カナ書きで出たので、NHKも和訳に困ったのでは?と思いました。

  ドイツ語の「歓迎の言葉」は、ほかに Willkommen、Servus などがあるのに、日本の独和辞典に無い単語が 使われた理由は、「spazieren 散歩する」と「Herein お入り」の2語が結びついたドイツ語というより、古来 ウィーンの慣用句だったのではと考えています。

 曲想は、わかりやすい、楽しい、踊りたくなるようなグランド・ワルツで、ツィーラー後期の作品です。

アンサンブル・シェーンフェルト演奏会

           アンサンブル・シェーンフェルト演奏会のご案内 

        アンサンブルシェーンフェルトちらし

シェーンフェルトのコンセプト
 愛好家の知識・技能を育てることが、音楽文化のインフラ固めになると思っている私・野村は、2002年創団の「アンサンブル・シェーンフェルト」を指揮して16年。団は20人ほど。二管編成など正規の編成にこだわらず、編曲技術でその響きを聞かせようとする小(サロン)・オーケストラです。
 齢を重ねると、何でも言いあえる集団に所属することがとても大切と実感致します。遠くは沼津から月2回の練習に参加する団員もいて皆の励みにもなっており、活動は人と繋がる練習以上の重要さを増しています。
 因みに、編曲技術で聞かせることを実践中…の極めつき合奏集団は聞いてびっくりアンサンブル音楽三昧! わずか5人でオーケストラ曲を演じます。

スラヴの音楽について ロシア?スラヴ?
 今年の第一部はスラヴ音楽特集です。
 ロシアとスラヴという言葉の違いを調べてみると、スラヴは包括的な用語で、スラヴ諸語を使う人々の総称が「スラヴ民族」とあり、ロシア人はもちろんポーランド人チェコ人も含まれるということです。大国ソビエト連邦を経験したロシアは、 「ロシア民族」という意識があるでしょうが、「スラヴ民族」の一員であって「ロシア民族」とは本来言いません。今回のプログラムはロシア音楽を演奏してみようという趣旨でしたが、スラヴ音楽特集としたほうがあたっています。
  東を向いた人 西を向いた人
東西に広がる広大なロシアは、昔から東からの侵略に脅かされてきました。近代の音楽家にも東を向いた人と西を向いた人がいます。つまり、作風が次第に西方に傾いた主格がチャイコフスキー。東を眺め、特徴的な作風を残した人はボロディンです。このたびの曲数はスラヴの音楽特集とはいえないほどではありますが、この2人の作品をお楽しみ下さい。
 久石 譲 作曲《風の谷のナウシカ から「風の伝説」「鳥の人」》 は、ご存知長編アニメのための付随曲です。宮崎監督は、雑誌の対談で「(風の谷のイメージは)中央アジアの乾燥地帯なんです」と語っていました。今回のスラヴ特集の曲とは時代が違っても同じ地域をイメージした曲なので、共通する何かを感じていただけたらと思いす。
 第二部のモーツァルト交響曲第25番は、映画『アマデウス』の開幕の曲です。どうぞ出かけ下さい。

動画にアップされているシェーンフェルトの過去の演奏
https://www.youtube.com/watch?v=TO9voqCmBD8
https://www.youtube.com/watch?v=ruXe7reDExQ
https://www.youtube.com/watch?v=ahm8lRqdaKk

ニッポン、歴史チェンバロ事始め回顧録 連載15-5

楽器学の威力
 「楽器学Organology」の守備範囲は楽器全般であって、古楽器に限らない。しかし、いま現場ではバロック・ピッチという415Hzで演奏される「ご都合」ピッチがあるが、昔の実態はどうだったのか知ろうとすれば、オリジナルのチェンバロの振動弦の弦長測定が情報をもたらし、「ご都合」の意味がわかってくる。
 真理が解明されると、心に充足感をもたらすものだ。古楽、古楽器には、その資源になる贈りものがある。

真理解明の手法
 いろいろある手法のうち、残存楽器に残されたオリジナルのC弦長(中央ハ音のオクターヴ上つまり2点ハ音の振動弦の長さ)分析と連動して、古いチューニング・ピンに巻き付いたままの昔の弦破片を、冶金学的に分析して昔のピッチ高を類推する・・・等の楽器学は我々を納得させる。
    WTC第1巻タイトルのバッハ/リーマン律が根拠にしたバッハの螺旋模様バッハ螺旋 クリックで拡大

 しかし、ほかの手法、例えば2005年発表されたリーマン博士が根拠にしたバッハの螺旋模様(上)が「自筆」であっても、解釈に色々な立場があることをみせたし、また、楽曲様式の視点に立つ論評はさらに心もとない。
 例えばバッハのフルートソナタ。
 権威本『新バッハ全集1963年刊』から、ハ長調(BWV1033)と変ホ長調(BWV1031)等4曲が偽作?扱いで抜けた。研究が進むと愛好家は不幸になる?と思っていたら、2006年には上記BWV1033、1031等が『真贋論争はさておきBach所縁の曲』としてヴァイオリン曲と一緒に収載するNBA VI-5が刊行された。この出たり入ったり騒ぎが、明確な偽作の根拠がないまま「様式、作曲技法上の疑念」から動いているので、確かに真作らしき光を放つロ短調(BWV1030)などと較べたくなるけれど、愛奏してきた人たちの気持ちも汲んでほしいものだ。音楽作品は、愛奏する人たちのためにあるのだから。
 
つづく

楽器クイズ その2

2月10日のブログ 『楽器クイズ』は、第3問 「鍵盤について」 が残っていました。

楽器クイズ第3問  

第3問  下はカレスト楽器の鍵盤です。 クリックで拡大 上は楽器筐体に収めたもの。下は筐体から出した状態。

      Karest3.jpg
 
     Karest鍵盤

 この鍵盤のシャープ・キイの配列には、現代一般的な鍵盤と異なる特徴があります。どこが違うのでしょうか。

ニッポン、歴史チェンバロ事始め回顧録 連載15-4

古楽の贈りもの(その4)
 
ハードとソフト
 古楽からは楽器(ハード)と、その楽曲・音律等(ソフト)の密接な関係を教えられる。特に初期鍵盤楽器の音色・余韻・タッチ・音域等ハード面の特性から影響を受けた楽曲の成立事情を探ると、目からうろこの事実が浮上する。

 例えばピッチ問題。ルネサンス期には汎欧州的な基準ピッチがあったとする新説から、1538, Trasuntino(ブリュッセル楽器博物館蔵)を参考に、キューピッドと大胆なポーズのヴィーナスが描かれた1531, Trasuntino(RCM蔵 )を、現代の長三度下( f にあたる) a1=348Hzという低ピッチでコピー製作し、「内部支柱」がなくても変形せず天国的響きが得られた…等の日本から発信できそうもないレポートがある(東京コレギウム刊 拙著『便覧上巻』p.66/『便覧下巻』p.105、同付録G参照)。

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   1531, Trasuntino(RCM蔵)

  ピッチだけではない。
 初期のモーツァルト作品、K.248《デュルニッツ・ソナタ》に詳細な強弱指示があるのに、晩期の超有名曲K.525《ハ長調ソナタ》に強弱指示がないのはなぜか

             K.525のオリジナル譜は左。
右は校訂者が強弱指示・スタカート、スラー、運指法まで記入した版。
K545.jpg  クリックで拡大

なぜ《月光ソナタ》第一楽章にダンパー解放指示があるのか・・・など思索するのは楽しい(拙著『Mozartファミリーのクラヴィーア考』p.88 「残響 楽曲への影響」に解説)。

つづく

通奏低音と藝大和声

古楽の贈りもの(その3)
 2013年11月24日の小ブログにも書いたが、バロック実践では通奏低音の数字視奏演習は必須で、ヘルマン・ケラーの『通奏低音奏法』(全音 現在絶版)も必要に迫られた拙訳だった。

                001.jpg ヘルマン・ケラー 『通奏低音奏法』(全音)

藝大和声
  いつの時代も、和声学の基になった通奏低音の重要性は変わらない。しかし、何たる皮肉か、日本の音大では『藝大和声』といわれる教科書が ン十年も席捲し続けた。その教科書で使われる記号や数字は、主筆・島岡譲先生が伝統的な表記法と異なる和音を示す記号として考案したもので、楽曲の和音の「機能」を中心としたアナリーゼにはよいが、通奏低音実技では全く通用しない。
 藝大和声の和音記号方式は日本の教育現場で定着してしまったので、伝統的な通奏低音分野で使われる数字、記号との関係があるのか無いのか困った通奏低音学習者がいたかもしれないが、関係はない。
 自分としては、20代の『芸大和声』がまだないころ学んだ「デュボアの和声学」は、伝統的且つ簡潔な数字と記号を使っており、すぐ通奏低音の感覚がつかめてラッキーだった。

               新しい和声

 教科書として新しく藝大と附属高校で採用されたという『新しい和声』が、音楽家に古楽の贈りものを認識させることになればめでたし目出度し。
 古楽界第一世代の多田逸郎氏から直接伺った話。英国大使館でヘンデルのブロックフレーテ・ソナタを演奏する機会があったとき、ヘンデルの通奏低音は決してやさしくはないのに、愛好家で伴奏者の「大使館員」が数字視奏をやってのけ、英国の奥の深さを知る体験をされたという。『藝大和声』脱却を機会に、我が国でもそのような光景に出会す時代がくるかもしれない。

つづく

ニッポン、歴史チェンバロ事始め回顧録 連載15-3

いろいろ脱線するものですから、久しぶりのニッポン、歴史チェンバロ事始め回顧録です。

古楽の贈りもの 
メディア
 IT時代とはなったが、情報を広める上での問題もある。日本音楽学会、オルガン研究会、大学等の紀要、論文集等々の労作は決して普遍的に読まれていない。雑誌が一番いい。かつての季刊『リコーダー』誌のようなメディアがあれば、プロ、アマ不問の刺激的な場が醸成されるはずである。
 2011年10月、新『季刊リコーダー』 が創刊されたようだが、発展を祈りたい。旧季刊『リコーダー』 が包括的に古楽全般にわたる話題を提供したような、また個人的な希望として、イギリスのチェンバロクラヴィコード、タンゲンテンフリューゲル等古い鍵盤楽器全般を採り上げる方針の季刊雑誌Harpsichord & Fortepianoの編集コンセプトであって欲しい。

通奏低音
 勿論、専門教育の「古楽効果」も期待できる。たとえばモーツァルトには、最後期のクラヴィーア協奏曲さえ数字記入があるし、ピリオード演奏から教えられる表現上のヒントもある。
 通奏低音はバロック初期創案の古い技法だが、その学習は主要旋律への拍節的配慮だけでなく、重複音や声部進行処理の「品格」等々、通奏低音を聴いただけで奏者の趣味と能力が見えてしまうからこわい。たかが伴奏というなかれ!
  昨年は二つの《フィガロ》を鑑賞した。どうしても全編にわたるチェンバロのレティタティーヴォ伴奏に惹かれる。演奏のひとつは、さる音大ピアノ科教授による数字→和音直訳式、アルペジオもパターン化した平凡な伴奏。もうひとつは当意即妙、オペラ専門に取り組む集団の無名のコレペティトーァによる見事な伴奏だった。70年代ころ、邦人によるオペラとバレーは鑑賞に堪えられないものが多かったが、んー・・・ここまで聴かせる若い伴奏奏者が遂に出てきた、という感慨だった。
 オペラのレティタティーヴォ伴奏は、カンタータやソナタの通奏低音とは種類・レベルの違う演奏を要求される。それを当人が認識しているかどうかで生じる差なのだ。 通奏低音の学習は今以て音楽力向上の素になる。鍵盤楽器の「伴奏上手」は「ソロだけ上手」より音楽力は高いといえるだろう。いま、古楽科のある音大以外、学生の通奏低音学習の重要性は認識されているのだろうか?チェンバロを音大の備品とする時代になったようだが、名器も奏者次第で活きるように、担当教員の意識次第で活かされないこともあるだろう。専門家教育のレベル・アップに資する古楽の役割領域、それと連動する古楽器製作活動の今後を思わずにいられない。
 数字視奏独習はピアノ、オルガン、キーボードでもできるが、音色・バランス等響きの感覚学習にはチェンバロを使い、アンサンブルすることが最も適していると思う。おまけに調律実技学習を迫られる。

つづく

楽器クイズ その1 の答え

第1問 
 中央部の「第二の響板風薄板」で隠れているところは除外して、左右に見える響板裏面などにはオリジナルの部材のほかに後補のリブがいくつか接着されています。
 番号をつけた部材のうち、後補の部材の番号を答えなさい。

      KAREST (3)

 考え方と答え
 オリジナルのリブは、実は1月12日の小ブログ『懐古 KAREST楽器』の記事冒頭で示したKAREST楽器の平面図にでています。湾曲したオリジナル・ブリッジを挟む二本の細棒だけがオリジナル。それ以外のリブ3,5,6は後補です。
 リブ以外のオリジナル部材のうち、1はピン板。第2問の答え=ヒッチピンレールの番号は7で、側板裏面を左上方へ延びている部分です。
 ヴァージナル特有の左右にあるブリッジのうち、KAREST楽器の平面図中、左上に伸びている黒の長い棒が左のブリッジで、振動に参加しています。8は、その裏面に相当する位置の謎の部材で、なぜ謎かというと、ブリッジ裏面に裏打ち材は不要だから、おそらく後補。

追記・KAREST楽器の音色
 この左ブリッジの位置から判断すると、音色は多分ヴァージナルの柔らかい音ではなく、チェンバロ風な浸透的な音色だったと思われます。

つづく


楽器クイズ その1

久しぶりの楽器クイズ 映像はクリックで拡大して観察して下さい。

 次の写真は、あるオリジナル・チェンバロの最高音部響板にひび割れが多数でき、十九世紀に手当した跡を底板を外して見せています。響板に接合してある多数の四角い不適切な木片など、部材名を矢印で示したもの以外は、すべて後補の処置です。

              高音部ヒビ 2

 O’Brienによると、響板の厚みは1640年作Andreasチェンバロがテナー域の3.8mmからバス端の2.4mm、高音端の2.4mmまでの変化、1611年作Ioannes (Hans II世)のミュゼラー・ヴァージナルは3.4mmから2.4mmの変化があるという、柾(まさ)目の薄板ですから最高音域のひび割れは珍しくありません。しかし、これほど多いとは驚きです。200年以上経つとこのようになるのでしょうか。そして、矢印で示した部材名以外が、後補の処置材であると皆さんすぐお分かりでしたか。

                 Karest2.jpg

それでは、目下第二の響板繋がりで観察している 上掲のKAREST楽器について出題します。

              KAREST (3)  おなじみのカレスト楽器も響板裏面には後補の材が…

第1問 中央部の「第二の響板風薄板」で隠れているところは除外して、左右に見える響板裏面などにはオリジナルの部材のほかに後補のリブがいくつか接着されています。
 番号をつけた部材のうち、後補の部材の番号を答えなさい。

第2問 番号をつけた部材のうち、ヒッチピンレールの番号を答えなさい。

第3問 は鍵盤について…次回出題します。